忘却の録音室と消えたトラック
# 事件:忘却の録音室と消えたトラック
## 〜 完全防音スタジオの密室劇 〜
**日時**: 20XX年9月20日 22:00発見
**場所**: 東京都内・プライベート録音スタジオ「サウンド・コア」
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## 事件の概要
音楽プロデューサーとして業界で名を知られる坂崎恭平(48)が、自身が所有する地下録音スタジオのコントロールルームで頭部から血を流して死亡しているのが発見された。
死亡推定時刻は同日21:00〜21:30の間。死因は室内で使われていた重厚な金属製ビンテージ・ヘッドホンアンプによる頭部強打。
現場となった地下スタジオは、ガラス越しに隣接する「ブースA(演奏室)」と「コントロールルーム(調整室)」で構成されている。防音扉は内側から施錠可能で、事件当時、コントロールルームのドアはスマートロックで施錠されていた。スタジオ内にいた関係者は当時4名。全員に何らかの動機が存在していた。
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## 登場人物
### 佐野 裕太(30)— サウンドエンジニア
坂崎の専属エンジニア。坂崎に自身の作曲クレジットを長年奪われ、著作権印税を不正に着服されていたことを最近突き止めた。
- **アリバイ**: 20:50〜21:40まで、ブースAに籠もってソロギターの演奏動画をファンクラブ向けに生配信していたと主張。配信アーカイブが残っている。
- **動機**: 印税の横領に対する怒りと復讐。
### 桐生 葵(24)— ヴォーカリスト
新人ボーカリスト。過去の私生活のスキャンダルを坂崎に握られており、不当な専属契約を強要されていた。
- **アリバイ**: 21:00〜21:30まで、1階のミーティングルームで歌詞の推敲をしていたと主張(1人だったため証明不可)。
- **動機**: 脅迫的契約からの解放。
### 蓮見 翔(28)— ギタリスト
坂崎がプロデュースするバンドのギタリスト。事件直前の20:30頃、楽曲の方向性を巡って坂崎と激しい殴り合い寸前の口論を起こしていた。
- **アリバイ**: 20:45に「頭を冷やす」と言ってスタジオを出て、近くのコンビニへ行ったと主張(21:20にスタジオに戻るまで単独行動)。
- **動機**: 楽曲の権利主張と激突による突発的感情。
### 陣内 拓磨(42)— レーベル担当者
坂崎の所属するレコード会社の担当者。坂崎への多額の未払い金があり、今夜中に支払わなければ訴訟を起こすと脅されていた。
- **アリバイ**: 21:00〜21:30まで、スタジオの外の車内で会社への電話連絡と書類整理をしていたと主張(通話履歴あり)。
- **動機**: 金銭的破滅の回避。
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## 物的証拠
- **生配信アーカイブとDAW(録音ソフト)のログ**:
- 佐野の生配信(20:50〜21:40)では、21:00〜21:30の間もギターの音が絶え間なく流れていた。
- しかし、録音PCに残されたマルチトラックログを確認すると、「マイク直入力(チャンネル1)」の音声波形は**21:10〜21:20の間完全に無音**であり、この10分間は足元のルーパー(自動繰り返し再生機)から出力された「ライン音源(チャンネル2)」のみが配信に流れていた。
- **防音ブースAのガラス反射**: 配信映像の21:15頃、ブースAの防音ガラスの反射光に、佐野が着用していた特徴的な赤と黒のチェックシャツを着た人物がブースの扉を開けて外へ出ていく影が微かに映り込んでいた。
- **凶器(ヘッドホンアンプ)のケーブル**: 凶器となったアンプの電源コードは、指紋こそ拭き取られていたものの、音響エンジニアがケーブルを保管する際に使う特殊な結び方「8の字巻き(シールド巻き)」で綺麗にまとめられていた。
- **蓮見のギタースペース**: コントロールルームの床から蓮見愛用の特注レッドピックが1枚落ちていた。
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## 証言
**佐野 裕太**:
「私は20:50から21:40まで、ブースAでずっとギター生配信をしていました。配信画面を見てもらえばわかりますが、私の手が止まることはありませんでしたよ。坂崎さんの部屋には入っていません。」
**桐生 葵**:
「21:00からはずっと1階で歌詞を書いていました。地下からは何も聞こえませんでした……防音ですから当然ですが。坂崎さんには苛立っていましたが、殺してはいません。」
**蓮見 翔**:
「20:30に坂崎とやり合ったのは認めます。頭にきたので20:45に外へ出てコンビニに行きました。コントロールルームに落ちていたピックは、口論した時にポケットから落ちたものだと思います。」
**陣内 拓磨**:
「21:00から21:30は車内で本社のデスクと電話交渉をしていました。通話履歴も残っています。坂崎さんを失うのは会社にとっても痛手ですから、私が殺すわけがありません。」